シンデレラはなぜ偉いか?自己肯定感と恋愛・結婚

恋と結婚

シンデレラの話を「顔がよくて玉の輿に乗ったラッキーな子」だと思っている人は多いと思います。でも、よく考えてみてください。彼女は継母と義姉にいじめられ、家事を押しつけられて育った、今でいう虐待を受けたヤングケアラーです。

その境遇で、彼女は自己肯定感を失っていない。

きい夢を描けて、チャンスを掴むために行動する。ドレスと馬車の支援には、笑顔でお礼を言って受け取る。お城に行っても場に臆することなく、堂々とした態度で優雅に踊り切る。相当な度胸です。普通の娘でも緊張する場面ですよ。

普通、あの家庭環境なら自己肯定感が下がって、夢なんて思い描けなくなります。支援を差し出されても、すぐには受け取れなくなります。つまりシンデレラは、顔がいい以前に、そもそも心が立派なのです。

支援を「受け取れる」のは能力である

ここが今日いちばん言いたいことです。本当に自己肯定感の低い子は、支援を受け取れないし、笑顔で感謝できない。

生まれたときから劣悪な環境で生きてきた子は、自ら支援を申請するとか、差し出されたものを素直に受け取るとかができません。それどころか、支援者を傷つけるようなことを言ってしまったりします。虐待されていた子が保護された直後、大人を試すような行動をとるのはよく知られた話です。「大切にされて当然」という自己イメージが持てていないから、大事に守ってくれる大人が信じられないのです。

支援が必要な度合いが高い人ほど、支援者からすると可愛げがない。残酷なパラドックスですが、これが現実です。

逆に、中流家庭で愛されて育った女性は、一時的にシングルマザーになったり病気になったりしても、支援者とのコミュニケーションがスムーズです。自ら支援を申請できるし、受け取れるし、笑顔で感謝する愛嬌があり、常識的な振る舞いで支援者からの信頼を得て、大事にされて、回復したら支援を卒業していく。

たまに、障害のある女性が男性に手厚く守られているのを見て、嫉妬する人がいます。自力で働いている側からしたら羨ましく見えるでしょう。でも、その子は支援を受け取れて、笑顔で感謝できているのです。それ自体がひとつの力です。笑顔で感謝してくれる老人の介護はつらくなくても、財布を盗んだと責めてくる認知症患者の介護はつらいから、プロに任せた方がいい――それと同じ構造です。

赤ちゃんを見てください。動物でも人間でも、赤ちゃんは自力で生きていけないから、大人のお世話を引き出す刺激をたくさん出します。見た目が可愛くて、ニコッと笑い、抱きつき、懐いて、甘える。そういう刺激が入ると、大人はお世話してしまうのです。児童養護施設でも、見た目が可愛くて愛嬌のある子ほど、お世話してもらいやすいという現実があります。

恋愛における自己肯定感

美人であっても、自己肯定感が低いと情緒不安定な印象になります。「私のこと好き?」「浮気してない?」と聞いてイラッとされたり、頼んでもいないことまで尽くしすぎて相手が調子に乗ったり。

一方で、「こういう気持ちだから、こうしてくれたら嬉しいな」と言える、自己肯定感のある普通の顔の女性の方が、健全な恋愛をしていたりします。自分の欲求に正当性を感じられるから、率直に伝えられるのです。

クズ男に捕まる話も同じです。もちろん元々クズな男性はいます。でも自己肯定感の高い人なら、早い段階で縁を切ります。「これは自分の扱いとして相応しくない」という自己イメージが持てるからです。自己肯定感が低いと、ギリギリまで我慢してしまう。自分の価値が低いと思っていたら、ひどい扱いが自分に相応しいような気分になってしまうからです。

健康な美人なのに、なぜか男性のクズさを引き出してしまう女性がいます。あれは、素直に善意を受け取り、笑顔で感謝するという自己肯定感が育っていないのです。

「モテ服」の正体はベビースキーマ

日本人男性の多数派にウケるモテ服が、無害そうで脅威を感じさせないパステルカラーなのはなぜか。パステルカラーは赤ちゃんの服にもよく使われる色です。ピンクのチーク、ピンクのリップ、ピンクのアイシャドウも同じ。つまり多数派にとっての「可愛い」とは、赤ちゃんっぽさなのです。赤ちゃん的な特徴が、お世話したい・守りたいという反応を引き出す刺激になっている。

だから戦略はターゲットによって変わります。ハイスペ狙いなら高級感のある上品で華やかなファッションで強気な美女を演出する。陽キャの一般人を狙うならカジュアルで華やかな色使い。おとなしい男性を狙うなら、脅威を感じさせないパステルカラー。実際の婚活のスタンダードは、コンサバな服で派手な色を使わない、それくらいです。みんなが女子アナファッションをしているわけではありません。

ただし、ここでも土台は同じです。見た目に気を使えるのは、「磨いたらなんとかなるだろう」という自信があるからできること。本当に自信のない子は、おしゃれしたって無駄だと思ってチャレンジしないのです。婚活のテクニック以前に、まず自己肯定感。仕事の夢も同じで、頑張ればなんとかなるんじゃないかという自信があるから、夢を持てる。細かいテクニックはそこからです。

考えてみれば、普通の日本人女性は「高収入の男性と自分は釣り合わない」と思って口説きに行きません。玉の輿を狙えるのは、同じくらい稼いでいる女性か美人か、ある程度自信のある人だけ。結婚相談所で高望みする人を笑う声がありますが、本当に自信のない子はそもそも出会いの場に行こうとすらしないのです。高望みできるだけ、比較的健全なのです。

格上の女性は、赤ちゃん記号が使えない

では、どうしても普通の男性より優秀な女性――たとえば女医は、どうすればいいのか。

彼女がパステルカラーの服を着ても、「可愛い=赤ちゃん=守ってあげたい格下」にはなりません。中身が記号と矛盾するからです。だから、なんらかの面で特技のある女性は、カリスマっぽさをあえて出してもいい。ミーハーな人なら「すごい人のチームの一員になれる」ことを誇りに思うかもしれないし、自己肯定感の高い男性ならそれでウジウジしません。

多数派にモテることはもう諦めて、モテ服ではないけれどビビらない人を選抜した方が、結婚した後に喧嘩にならないでしょう。そして「多数派にはモテないタイプでも、きっと相性のいい人はいる」と信じられるとしたら――それこそが自己肯定感です。

お姫様マインドは「受け取る許可」の練習

「お姫様マインドを練習する」という女性向けの自己啓発書が昔からあります。受け身だと批判されがちですが、私はあれ、受け取る許可を出す練習になっていると思います。受け取ることがネックだった人には、いいトレーニングになるかもしれません。元々できている人には、あまり変化はないでしょうけれど。

受け身であっても受け取れる。これは、結婚して母親になる女性にとっては、かなり大事なことです。

男性に対して努力しすぎるタイプの人がいます。尽くしすぎたり、自分磨きをしすぎたり。でも男性側がクズでなければ、好きな女性には、気持ちよく受け取って感謝してくれる方が嬉しいのです。それをしてくれたら機嫌が良くなる男性は多い。

女医のような圧倒的に格上の女性でも、ここは同じだと思います。受験や仕事のマインドを一旦横に置いて、パートナーの前では受け身で受け取って感謝して愛嬌を振りまく、そういうモードに切り替える。それをやっても不機嫌になる男性は、そもそも自信がなくて「格下の女だったら上に立てたのに」と思っているわけだから、優秀なタイプにはもう合わない。それで選抜完了です。

完璧な生徒会長より、欠点の少ない無難な女

完璧でみんなの憧れの生徒会長が、彼氏の前では赤ちゃんみたいで……という漫画がよくあります。ああいうのに萌える人はいっぱいいる。でも、プライベートでちょっとバカなふりをする、というのをわざわざやるのは、本当に優秀な女にはだるいんですよね。

だから、欠点の少ない無難な女の方がモテたりします。私は絵本を出版したことがありますが、絵と文章とグラフィックデザインとマーケティング戦略以外はポンコツです。全部優秀だと「隙がないな」と思われるので、全部優秀な人は大変だと思います。むしろそれがコンプレックスになっている女性もいるはずです。

90点と40点のある人より、全部70点みたいな女性の方が、結婚相手としては安心だと思います。でも全部90点でも、マッチングしづらくなる。歯痒さを感じている人もいるでしょう。私はバランスが悪いタイプです。欠点の少ない無難なタイプ、全部合格点だけど特技もない、そういう女性が一番、男性に安心感を与えるのでしょう。

考えてみれば、日本の教育は全部合格点を目指すものです。「ここはすごく才能があるけど、これは苦手」という生徒は良しとされません。それは会社員に適性のある人にはフィットするし、そういう人はいい結婚相手になるでしょう。

キャラを作ると、死ぬまで演技することになる

無理にキャラを作ると、素顔が分かったときに「騙された」と思われます。男受けに合わせすぎて背伸びしすぎても、好かれたのは本来の個性ではないので、死ぬまで演技し続けることになります。

素顔が分かっても愛し続けるのが真実の愛情かもしれない。でも、最初からあまり背伸びしすぎず自然体でいられる方がいい。結婚は毎日一緒に暮らすものです。ずっと演技するのは疲れます。だから、できるだけ自然体でいられる人と一緒にいた方がいいのです。

偉そうなのは、愛情表現かもしれない

私の知り合いに、夫より稼いでいる優等生の女性がいます。彼女は親にも夫にも、ちょっと偉そうです。でもそれは彼女の愛情表現で、距離感が近いことの現れです。その他の人には、もっと他人行儀だからです。

心を許している人の前では、優等生っぽさが減ってしまう。初対面で「優等生だ」と思って近づいた人のほとんどは、距離が近くなったとき「思っていたのと違う」と感じて離れていくでしょう。最初の印象を気に入って仲良くなろうとしたのに、裏切られたと思ってしまうから。

でも、それでも仲良くしているうちに、気づくのです。それが信頼の証拠なんだと。

そういうのが真実の愛情なんじゃないかと思います。分かってあげる、ということ。そういう夫婦を知っています。素敵な夫婦だと思っています。

誤解のないように言うと、彼女は偉そうな「だけ」ではありません。親にも夫にもいろいろやってあげているし、周りの人には礼儀正しく、親切です。だから愛されているのです。偉そうなだけだったら、愛されないですよね。

「アホそうにかわいこぶるなんて無理」という人でも、筋を通し続けたらなんとかなるんじゃないか、と感じさせてくれた例でした。だって、立派な人ですから。そういう人を正妻に望む男性は、しっかりした人ですよね。

まとめ:魔法はドレスではなく、心の土台

シンデレラの魔法は、ドレスでも馬車でもガラスの靴でもありません。あの境遇で「自分は幸せに値する」と信じ続け、夢を描き、支援を笑顔で受け取り、堂々と踊れた心の土台です。

モテ服も、メイクも、婚活のテクニックも、全部その上に乗る戦術にすぎません。土台がなければ、おしゃれする気力も、出会いの場に行く勇気も、善意を受け取る素直さも出てこない。

だからもし今、何かがうまくいっていないと感じるなら、テクニックの前に、自分に問いかけてみてください。差し出されたものを、笑顔で「ありがとう」と受け取れていますか?――それができた日から、物語は動き出すのだと思います。

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