「もっと臨機応変に対応して」
仕事でそう言われるたびに、心がすり減っていませんか。急な変更、割り込みの電話、同時に降ってくる頼まれごと。周りの人は平気な顔でこなしているのに、自分だけ頭が真っ白になってしまう。終わったあとは、どっと疲れている。
私も臨機応変が苦手です。予定が急に変わると固まってしまうし、同時に2つのことを頼まれると、どちらも中途半端になってしまう。「なんでみんなは普通にできるんだろう」と、自分を責めた時期が長くありました。
でも、いろいろな働き方を試し、家族や周りの人を観察してきて、ようやく分かったことがあります。臨機応変が苦手なのは、能力が低いからではありません。頭の使い方のタイプが違うだけです。
そして、そのタイプに合った仕事を選べば、消耗せずに、むしろ強みを発揮して働けます。この記事では、臨機応変が苦手な人の本当の正体と、向いている仕事・向いていない仕事、そして消耗しない働き方のコツをお伝えします。
臨機応変が苦手なのは、能力不足ではない
「臨機応変にできない=仕事ができない」と思われがちですが、これは半分間違っています。
正確に言うと、仕事の優秀さには2種類あって、あなたはそのうちの片方が苦手なだけなのです。
仕事の優秀さには2種類ある
私は、仕事の優秀さは大きく2つのタイプに分かれると思っています。
1つ目は「その場で素早く捌くタイプ」の優秀さ。
目の前で同時に起こる出来事を、考え込まずに次々と処理していく力です。接客、電話対応、忙しい厨房、現場仕事。こういう場面で光る人は、切り替えが速く、記憶の一時置き場(ワーキングメモリ)が広く、とっさの対人対応がうまい。
2つ目は「じっくり考えて仕組みを作るタイプ」の優秀さ。
時間をかけて考え、経験から教訓を抜き出して、次に活かす力です。1回の失敗から「なぜ失敗したのか」を掘り下げて、同じ失敗をしない仕組みを作る。目の前のスピードでは負けても、長い時間をかけて積み上げる勝負では強い。
臨機応変が苦手な人は、たいてい2つ目のタイプです。その場のスピード勝負が苦手な代わりに、じっくり考える勝負なら強い。能力が無いのではなく、能力の種類が違うのです。
学校や職場では「その場で捌く力」ばかり評価される
問題は、世の中の多くの職場が「その場で捌く力」を標準装備として要求してくることです。
電話は鳴るし、予定は変わるし、頼まれごとは割り込んでくる。新人のうちに任される仕事ほど、この傾向が強い。だから、じっくりタイプの人は社会人の入り口でいきなり苦手分野の試験を受けさせられて、「自分は仕事ができない」と思い込んでしまうのです。
でも、思い出してみてください。学生時代、一夜漬けは苦手でも、コツコツ積み上げる勉強なら得意ではありませんでしたか。反射神経のゲームは苦手でも、じっくり考えるパズルや読書なら没頭できませんでしたか。
その得意は、消えていません。評価される場所に、まだ立っていないだけです。
じっくり考えるタイプの本当の強み
じっくりタイプの強みは、一言でいうと「経験から教訓を自分で作れること」です。
その場で捌くタイプの人は、仕事のパターンを覚えるのが速い。でも、覚えたパターンが通用しない場面になると、新しいパターンを誰かに教えてもらう必要があります。
一方、じっくりタイプの人は、立ち上がりこそ遅いものの、一つの経験から「他の場面でも使える教訓」を自分で抜き出せます。だから、経験を積むほど、教わっていないことにも対応できるようになっていく。
例えるなら、その場で捌くタイプは短距離走者で、じっくりタイプは長距離走者です。最初の100メートルで差がついても、勝負が長くなるほど追い抜いていける。「大器晩成」と呼ばれる人の多くは、実はこのタイプだと私は思っています。
臨機応変が求められる仕事・求められない仕事
では、具体的にどんな仕事を選べばいいのでしょうか。
臨機応変型に向いている仕事(じっくり型には消耗が大きい)
- 接客・販売(お客様対応が読めない)
- 電話対応が多い事務・コールセンター(割り込みが常に発生する)
- 飲食店のホール・厨房(同時進行が前提)
- 現場監督・店長職(トラブル対応が仕事の中心)
これらの仕事は「同時に、すぐに、その場で」が基本です。じっくりタイプが頑張れば頑張るほど、消耗していきます。
じっくり型に向いている仕事
- Webライター・ブログ(自分のペースで考えて書ける)
- データ入力・文字起こし(割り込みが少なく、集中できる)
- 経理・簿記系の事務(正確さとコツコツが評価される)
- 動画編集・デザイン(納期はあるが、作業時間は自分で配分できる)
- Kindle出版などのストック型の仕事(じっくり作ったものが資産になる)
共通点は、「考える時間を自分でコントロールできること」です。急かされず、割り込まれず、自分のリズムで積み上げられる仕事なら、じっくりタイプは本来の力を発揮できます。
体力に不安がある方は、こちらの記事で在宅でできる仕事を詳しく紹介しています。じっくりタイプと在宅ワークは、とても相性がいいのです。
私の家族の話:2つのタイプを間近で見て育った
実は私は、この2つのタイプを子どもの頃からずっと間近で見てきました。私の両親が、ちょうど正反対のタイプだったからです。
父は、数学の公式を丸暗記して、パターンで問題を解くタイプでした。効率よく試験対策をして、素早く合格点を取る。資格試験もたくさん取りましたが、試験が終わると内容を忘れてしまうタイプでした。
母は、納得するまで根本から理解するタイプでした。塾にも行かず、自分のペースでじっくり考えて、一度理解したことは何年経っても覚えている。社会人になってからも、知的好奇心のために資格や習いごとを学び続けています。
同じ大学に合格した2人ですが、働き方の向き不向きは全く違いました。そして私は、母寄りのタイプだと気づくのに、ずいぶん時間がかかりました。
タイプの違いは、優劣ではありません。ただ、自分のタイプを知らないまま合わない場所で頑張り続けると、どちらのタイプでも苦しくなります。私が仕事選びで一番大切にしているのは、この教訓です。
じっくり型が消耗しない働き方のコツ
仕事をすぐに変えられない場合でも、消耗を減らす工夫はあります。
準備とマニュアル化で「その場」を減らす
じっくりタイプの弱点は「その場で考えること」なので、その場で考える場面を事前に潰しておくのが基本戦略です。
よくある質問への回答をあらかじめ書いておく。急な変更が起きたときの手順を自分用にマニュアル化しておく。私は結婚や仕事のような大きなライフイベントも、事前に調べて、必要なスキルを訓練して備えるタイプです。準備は、じっくりタイプに許された最強の武器だと思っています。
「苦手を治す」より「環境を変える」
臨機応変さは、訓練で多少はマシになります。でも、タイプそのものは変わりません。
苦手の克服に人生の時間を使うより、得意が評価される環境に移動する方が、ずっと早くて確実です。頑張る方向を「苦手の矯正」から「得意が活きる場所探し」に切り替えた瞬間から、働くことがラクになっていきます。
自分のタイプを深く知る
そもそも自分がどちらのタイプなのか、あるいは両方の性質をどのくらい持っているのか。それを知ることが、すべてのスタートです。
私は自己理解のために、占いの本をツールとして使ってきました。当たる・当たらないではなく、「自分はどんな場面で消耗しやすいのか」を言葉にしてくれるフレームワークとして、とても役に立ちます。
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よくある質問
Q. 臨機応変さは訓練すれば身につきますか?
ある程度はマシになりますが、その場で捌くタイプの人と同じレベルにはなりにくい、というのが正直なところです。「苦手なりに困らない程度」を目指して準備とマニュアル化で補い、勝負は得意分野でするのが現実的だと思います。
Q. マルチタスクができないのは甘えですか?
甘えではありません。同時進行の得意・不得意は、頭の使い方のタイプの違いです。マルチタスクができない人は、シングルタスクの集中力で勝負できる仕事を選べばいいのです。実際、深い集中が必要な仕事(執筆、分析、制作系)では、むしろシングルタスク型の方が成果を出しやすいと感じます。
Q. 要領が悪いと言われ続けて、自信がありません
「要領がいい」と言われる人は、その場で捌くタイプであることが多いです。あなたが要領が悪いのではなく、要領の良さが評価される競技に出場させられているだけかもしれません。競技を変えれば、評価は変わります。私自身がそうでした。
まとめ:競技を変えれば、評価は変わる
臨機応変が苦手なのは、欠陥ではありません。じっくり考えて積み上げるタイプの頭を持っているということです。
そのタイプのまま、その場で捌く競技に出続ければ、消耗して自信を失います。でも、じっくり考える競技に移れば、同じあなたのまま、強みを発揮できる。
大切なのは、根性でも訓練でもなく、自分のタイプを知って、競技を選ぶこと。
今の仕事がつらいなら、それはあなたが弱いからではなく、競技が合っていないだけかもしれません。自分に合った競技は、必ずあります。焦らず、じっくり、探していきましょう。それこそが、じっくりタイプの得意分野なのですから。
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